2026年7月22日

健診で「血圧が高い」と言われた方へ
健康診断で「血圧が高めです」「高血圧の疑いがあります」と言われても、特に症状がないため、そのまま様子を見ている方は少なくありません。
血圧は、緊張、睡眠不足、直前の運動、カフェイン、喫煙、ストレスなどでも一時的に上がることがあります。そのため、健診で1回高かっただけで、すぐに高血圧と決めつける必要はありません。
一方で、高血圧は自覚症状がほとんどないまま進行し、脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎臓病などのリスクを高める病気です。日本高血圧学会も、高血圧は将来の脳卒中・心臓病・腎臓病・認知症の発症リスクを高める病気であり、家庭血圧の測定が診断と治療に役立つと示しています。
健診で血圧を指摘されたときに大切なのは、「たまたま高かったのか」「普段から高いのか」を確認することです。そのためには、医療機関での再測定や、家庭血圧の記録が重要になります。
高血圧とは?どのくらいから高いのか
血圧には、上の血圧である「収縮期血圧」と、下の血圧である「拡張期血圧」があります。
一般的に、医療機関や健診などで測る診察室血圧では、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合、高血圧と判断されます。家庭で測る家庭血圧では、診察室よりも低い基準が用いられ、135/85mmHg以上が高血圧の目安になります。
ただし、血圧は1回の測定値だけで判断するものではありません。日によっても、時間帯によっても変動します。健診で高かった場合には、家庭血圧を一定期間測定し、本当に普段から血圧が高いのかを確認することが大切です。
血圧の目安
| 分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 |
|---|---|---|
| 正常血圧 | 120/80mmHg未満 | 115/75mmHg未満 |
| 正常高値血圧 | 120〜129/80mmHg未満 | 115〜124/75mmHg未満 |
| 高値血圧 | 130〜139/80〜89mmHg | 125〜134/75〜84mmHg |
| 高血圧 | 140/90mmHg以上 | 135/85mmHg以上 |
※実際の診断や治療方針は、年齢、持病、心臓・腎臓・脳血管疾患の有無などを踏まえて判断されます。
健診で高かった血圧は「たまたま」なのか?
健診では、普段と違う環境で血圧を測ります。白衣を見たり、検査会場で緊張したりするだけで血圧が上がることもあります。これを「白衣高血圧」といいます。
一方で、健診や診察室ではそれほど高くないのに、自宅や早朝、仕事中などに血圧が高くなる方もいます。これは「仮面高血圧」と呼ばれ、家庭血圧を測らなければ見逃されることがあります。
日本高血圧学会は家庭血圧測定を推奨しており、朝と晩に測定すること、1回の機会に原則2回測定して平均を取ること、週5日以上測定した結果を主治医に見せることを勧めています。
健診で血圧が高いと言われた場合には、まず家庭血圧を記録し、「普段の血圧」を確認することが重要です。
家庭血圧の正しい測り方
家庭血圧は、測り方によって数値が大きく変わることがあります。正しく測らないと、本来より高く出たり、逆に低く出たりすることがあります。
朝の測定
朝は、次の条件で測定します。
- 起床後1時間以内
- トイレを済ませた後
- 朝食前
- 降圧薬を飲んでいる方は服薬前
- 椅子に座って1〜2分安静にしてから測定
夜の測定
夜は、就寝前に測定します。入浴直後、飲酒直後、運動直後は血圧が変動しやすいため、少し時間をあけてから測定しましょう。
測定時のポイント
血圧計は、できれば上腕式のものを使用します。椅子に座り、背もたれに背中をつけ、足を組まず、腕を心臓の高さにして測定します。測定中は会話をせず、リラックスした状態で行いましょう。
1回だけの数値に一喜一憂する必要はありません。朝・夜の血圧を数日から1週間程度記録し、平均的な傾向を見ることが大切です。
高血圧を放置するとどうなるのか
高血圧が怖いのは、血圧が高いこと自体で強い症状が出るからではありません。血管に長期間負担がかかり、脳、心臓、腎臓などの臓器に少しずつダメージが蓄積することが問題です。
高血圧を放置すると、次のような病気のリスクが高くなります。
- 脳梗塞
- 脳出血
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 心不全
- 慢性腎臓病
- 腎機能低下
- 認知症
- 動脈硬化
厚生労働省の情報でも、脳卒中の最大の原因は高血圧であり、脳卒中予防のためには減塩や体重管理、禁煙、節酒、運動などが重要とされています。
また、日本高血圧学会は、収縮期血圧を10mmHg下げることで脳卒中・心臓病が約2割減少すると示しています。血圧を少し下げるだけでも、将来の病気を防ぐうえでは大きな意味があります。
高血圧の原因
高血圧の多くは、特定の一つの原因だけで起こるのではなく、体質や生活習慣が重なって起こります。
主な原因として、次のようなものがあります。
- 塩分のとりすぎ
- 肥満
- 運動不足
- 飲酒量が多い
- 喫煙
- 睡眠不足
- ストレス
- 加齢
- 遺伝的な体質
特に日本人では、食塩のとりすぎが高血圧の重要な原因とされています。厚生労働省も、日本人の高血圧の最大の原因は食塩のとりすぎであり、若年・中年男性では肥満が原因の高血圧も増えているとしています。
また、高血圧の中には、他の病気が原因で起こる「二次性高血圧」もあります。甲状腺や副腎の病気、腎臓の病気、睡眠時無呼吸症候群などが関係することがあります。
若いのに血圧が非常に高い、急に血圧が上がった、薬を飲んでも下がりにくい、いびきや日中の眠気が強い、血液検査でカリウムが低い、腎機能異常や尿蛋白を指摘されている場合などは、二次性高血圧の確認が必要になることがあります。
健診で血圧が高いと言われたら、いつ受診すべき?
健診で血圧を指摘された場合、次のような方は早めに医療機関で相談しましょう。
早めの受診をおすすめする場合
- 健診で140/90mmHg以上を指摘された
- 家庭血圧で135/85mmHg以上が続く
- 160/100mmHg以上の血圧が出ている
- 糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病がある
- 尿蛋白、腎機能低下、心電図異常を指摘された
- 家族に脳卒中や心筋梗塞の方がいる
- 喫煙している
- 肥満や睡眠時無呼吸症候群が疑われる
- 以前から血圧を指摘されていたが放置している
特に、血圧が180/110mmHg以上と非常に高い場合や、強い頭痛、胸痛、息切れ、ろれつが回らない、片側の手足が動かしにくい、視野が欠けるなどの症状がある場合は、通常の外来受診を待たず、緊急の対応が必要になることがあります。
医療機関ではどのような検査をするのか
高血圧の診療では、血圧を下げることだけでなく、すでに臓器に影響が出ていないか、他の生活習慣病が隠れていないかを確認することが大切です。
一般的には、次のような検査を行います。
血液検査
腎機能、電解質、血糖、HbA1c、脂質、尿酸などを確認します。糖尿病や脂質異常症を合併していると、動脈硬化のリスクが高くなるため、血圧とあわせた管理が重要です。
尿検査
尿蛋白や尿潜血を確認します。高血圧は腎臓に負担をかける一方で、腎臓の病気が原因で血圧が高くなることもあります。
心電図
心臓に負担がかかっていないか、不整脈がないかなどを確認します。
胸部レントゲン・心エコーなど
必要に応じて、心臓の大きさや心機能を確認します。長期間の高血圧では、心臓に負担がかかり、心肥大や心不全につながることがあります。
家庭血圧の確認
診察室血圧だけでなく、家庭血圧の記録を確認することで、白衣高血圧や仮面高血圧の判断に役立ちます。
高血圧の治療は何をするのか
高血圧の治療は、大きく分けて「生活習慣の改善」と「薬物療法」です。
血圧の高さ、年齢、持病、臓器障害の有無、脳卒中や心筋梗塞のリスクなどを総合的に判断して治療方針を決めます。
生活習慣の改善
高血圧の治療では、生活習慣の改善が基本になります。
主なポイントは次の通りです。
- 減塩
- 体重管理
- 適度な運動
- 節酒
- 禁煙
- 睡眠の改善
- ストレス対策
日本高血圧学会は、高血圧の方では食塩摂取量を1日6g未満にすることをすすめています。また、生活習慣の改善として、減塩、運動、肥満の是正、節酒などで血圧が下がると示しています。
ただし、生活習慣を完璧に変えようとすると、かえって続かないことがあります。まずは、麺類の汁を残す、漬物や加工食品を控える、外食の頻度を見直す、1日10分歩く、体重を毎日測るなど、取り組みやすいことから始めるのが現実的です。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合や、血圧が高い状態が続いている場合、糖尿病や腎臓病などの合併症がある場合には、血圧を下げる薬を使用します。
降圧薬にはいくつかの種類があり、年齢、腎機能、心臓の状態、糖尿病の有無、むくみや脈拍などを見ながら選択します。
薬を始めることに抵抗を感じる方もいますが、降圧薬は「一度始めたら終わり」ではなく、血圧の変化や生活改善の状況に応じて調整していくものです。大切なのは、自己判断で中断せず、家庭血圧を記録しながら医師と相談して管理することです。
目標血圧はどのくらい?
高血圧の診断基準と、治療で目指す血圧は同じではありません。
診断基準は「高血圧かどうか」を判断するための目安です。一方、治療目標は「将来の脳卒中や心臓病を減らすために、どこまで血圧を下げるか」という考え方です。
日本高血圧学会の高血圧管理・治療ガイドライン2025では、降圧目標として収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満が示されています。
ただし、実際の目標は一人ひとり異なります。高齢の方、ふらつきがある方、腎機能が低下している方、複数の薬を内服している方などでは、体調や副作用を見ながら慎重に調整します。
「とにかく低ければよい」というわけではなく、安全に、継続できる形で血圧を管理することが大切です。
よくある質問
Q. 健診のときだけ血圧が高い場合も受診した方がいいですか?
一度だけ高かった場合でも、まずは家庭血圧を測ってみることをおすすめします。家庭血圧が正常であれば白衣高血圧の可能性がありますが、将来的に高血圧へ進むこともあるため、定期的な確認は必要です。
Q. 症状がなければ放置しても大丈夫ですか?
高血圧は、症状がないことが多い病気です。症状がないから安全というわけではありません。むしろ、症状がないうちから管理することで、脳卒中や心臓病、腎臓病の予防につながります。
Q. 血圧の薬は一生飲み続ける必要がありますか?
必ずしも全員が一生同じ薬を飲み続けるわけではありません。体重減少、減塩、運動、飲酒量の見直しなどで血圧が改善すれば、薬の量を調整できる場合もあります。ただし、自己判断で中止すると血圧が再上昇することがあるため、必ず医師と相談しましょう。
Q. 家庭血圧はいつ持っていけばよいですか?
健診で血圧を指摘されたら、朝と夜の血圧を1〜2週間ほど記録して受診すると、診療がスムーズです。記録は血圧手帳でも、スマートフォンのメモでも構いません。
まとめ|健診で血圧が高いと言われたら、まずは普段の血圧を確認しましょう
健診で血圧が高いと言われても、1回の測定だけで高血圧と決まるわけではありません。しかし、高血圧は自覚症状がないまま進行し、脳卒中、心臓病、腎臓病などのリスクを高める病気です。
大切なのは、健診結果を放置せず、家庭血圧を測定し、普段の血圧を確認することです。
特に、家庭血圧で135/85mmHg以上が続く場合、健診で140/90mmHg以上を指摘された場合、尿蛋白・腎機能低下・糖尿病・脂質異常症などをあわせて指摘されている場合には、早めに内科やかかりつけ医へ相談しましょう。
血圧は、早い段階で気づき、継続的に管理することで、将来の大きな病気を防ぎやすくなります。健診での指摘を、体の状態を見直すきっかけにしましょう。