2026年5月02日

「最近トイレが近い」「夜中に何度も起きてしまう」「年齢のせいだと思っていたけれど、だんだんつらくなってきた」――このようなお悩みは、男女を問わずよくみられます。
頻尿や夜間頻尿は、加齢に伴って増えやすい症状ですが、過活動膀胱、前立腺肥大症、尿路感染症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、心不全、腎機能障害など、背景に原因が隠れていることもあります。原因に応じて対処法は異なるため、「仕方ない」と我慢し続けず、症状の特徴を整理して受診につなげることが大切です。
頻尿・夜間頻尿とは?
頻尿とは、「尿が近い」「尿の回数が多い」と感じる症状のことです。一般的には、朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上を目安としますが、8回未満でもご本人が「多い」と感じて困っていれば頻尿と考えます。
夜間頻尿とは、主な睡眠時間中に、排尿のために1回以上起きなければならない状態をいいます。1回でも眠りが分断されてつらい場合は、十分に相談する価値があります。夜間頻尿は睡眠の質を下げ、日中のだるさや集中力低下にもつながるため、生活の質に大きく影響する症状です。
頻尿・夜間頻尿の主な原因
1. 過活動膀胱
膀胱にまだ十分な尿がたまっていないのに急に尿意が起こり、我慢しにくくなる状態です。頻尿や夜間頻尿に加えて、「急にトイレに行きたくなる」「間に合わず漏れそうになる、あるいは漏れてしまう」といった症状を伴うことがあります。
2. 前立腺肥大症や残尿の増加
男性では、前立腺肥大症によって尿が出にくくなり、排尿後も膀胱に尿が残ることで、結果的に何度もトイレに行きたくなることがあります。「尿の勢いが弱い」「出始めに時間がかかる」「出し切れていない感じがする」といった症状がある場合は、このタイプが疑われます。
3. 多尿・夜間多尿
膀胱そのものではなく、作られる尿の量が多いことで頻尿になることがあります。水分の摂りすぎ、利尿薬の影響、糖尿病などで1日全体の尿量が増える「多尿」のほか、夜間だけ尿量が増える「夜間多尿」もあります。夜間多尿は、高血圧、心不全、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などが背景にあることもあり、夜だけ何度も起きる場合は特に原因の見極めが重要です。
4. 尿路感染症・炎症
膀胱炎や前立腺炎などで膀胱や尿路が刺激されると、頻尿が起こります。この場合は、排尿時の痛み、残尿感、下腹部の違和感、血尿などを伴うことが少なくありません。女性に多い急性膀胱炎では、頻尿・排尿時痛・血尿が典型的です。
5. 睡眠障害
夜間頻尿は、「尿の問題」だけでなく「眠りの問題」が関係していることもあります。日本の夜間頻尿診療ガイドラインでも、夜間頻尿の原因は大きく、膀胱蓄尿機能の低下、多尿・夜間多尿、睡眠障害に分けて考えることが示されています。
6. 腫瘍やその他の病気
頻尿の背景に、まれに膀胱がんなどの腫瘍が隠れていることがあります。特に血尿を伴う場合は注意が必要です。また、糖尿病や神経の病気、手術後の神経障害、心因性の頻尿など、泌尿器以外の要因が関わることもあります。
こんな症状があれば早めの受診をおすすめします
頻尿や夜間頻尿だけでなく、次のような症状がある場合は早めの受診が大切です。
尿に血が混じる、排尿時に痛みがある、発熱を伴う、急に症状が悪化した、尿が出にくい、残尿感が強い――こうした場合は、感染症や出血、排尿障害など、早めの対応が必要な病気が隠れていることがあります。特に、排尿症状に発熱を伴う場合は、腎臓や前立腺などの感染症で重症化することもあるため、できるだけ早く受診が勧められます。
受診時にどのような検査をするの?
頻尿・夜間頻尿の診療では、まず症状の出方を詳しく確認します。急な尿意があるか、1回の尿量は多いか少ないか、血尿や排尿痛があるか、夜だけ多いのか、日中も多いのか、といった点が原因の見極めに役立ちます。過活動膀胱が疑われる場合には、症状質問票が使われることもあります。
また、排尿日誌はとても有用です。何時にどれくらい飲んだか、何時にどれくらい排尿したかを数日記録することで、多尿なのか、夜間多尿なのか、膀胱が小さくなっているタイプなのかを整理しやすくなります。
検査としては、尿検査と残尿測定が重要です。尿検査は感染や血尿の確認に役立ち、残尿測定は排尿後に膀胱内にどれくらい尿が残っているかを調べる検査です。必要に応じて、超音波検査や血液検査、基礎疾患の評価が追加されます。
頻尿・夜間頻尿の治療法
治療は「とにかく回数を減らす」のではなく、原因に合わせて行うことが基本です。日本の夜間頻尿診療ガイドラインでも、原因ごとに治療方針を分けて考える重要性が示されています。
生活習慣の見直し
夜間頻尿に対しては、生活指導が推奨されています。具体的には、飲水量の見直し、夕方以降のアルコールやカフェインを控えること、塩分を控えること、規則正しい睡眠、日常の運動、就寝前の行動の整え方などが挙げられます。就寝2時間前以降の飲水を控える、就寝2時間前に入浴する、といった工夫が紹介されています。
行動療法
過活動膀胱が関わる場合には、膀胱訓練や骨盤底筋体操、体重管理などの行動療法が有効とされています。副作用が少なく、まず試みやすい治療です。
薬物療法
過活動膀胱では抗コリン薬やβ3作動薬、前立腺肥大症ではα1遮断薬、PDE5阻害薬、5α還元酵素阻害薬などが使われます。夜間の尿量が多いタイプでは、原因を確認したうえで夜間尿量を抑える治療薬が用いられることもあります。どの薬が合うかは、年齢、基礎疾患、残尿の有無、副作用の出やすさなどを踏まえて決めます。
基礎疾患の治療
糖尿病、高血圧、心不全、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などが背景にある場合は、その治療自体が頻尿・夜間頻尿の改善につながります。夜間頻尿は泌尿器だけの問題とは限らないため、必要に応じて内科的な評価も大切です。
「水分を減らせば治る」は本当?
頻尿や夜間頻尿で悩むと、「とにかく水分を減らせばよい」と考えがちです。確かに、飲みすぎが原因なら調整が有効なことはあります。実際、ガイドラインでも飲水指導は重要な生活指導のひとつです。
ただし、すべての頻尿が水分の摂りすぎで起こるわけではありません。膀胱の過敏さ、前立腺肥大症、感染症、糖尿病、睡眠障害など、原因が異なれば対処法も変わります。自己判断で極端に水分を減らすのではなく、症状の出方に合わせて原因を確認することが大切です。
頻尿・夜間頻尿は何科を受診すればよい?
頻尿・夜間頻尿は、まず泌尿器科に相談しやすい症状です。とくに、尿意切迫感、残尿感、尿が出にくい、血尿、排尿時痛などを伴う場合は、泌尿器科での評価が役立ちます。いっぽうで、糖尿病や高血圧、心不全、睡眠時無呼吸症候群などが疑われる場合は、内科的な評価も重要になります。
まとめ
頻尿・夜間頻尿は、よくある症状ですが、原因はひとつではありません。
過活動膀胱、前立腺肥大症、多尿・夜間多尿、膀胱炎などの感染症、睡眠障害、内科的な病気まで、幅広い背景が考えられます。だからこそ、「年齢のせい」と決めつけず、症状の出方を整理して相談することが大切です。排尿日誌や尿検査、残尿測定などを通して原因を見極めることで、適切な治療につなげることができます。
当院でも、頻尿・夜間頻尿のご相談を受け付けています。
「日中のトイレが近い」「夜中に何度も起きる」「急に尿意が来て困る」「尿の勢いが弱くなってきた」など、気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。