2026年6月03日

健康診断や人間ドックで、
「尿蛋白が陽性です」
「腎機能が低下しています」
「クレアチニンが高めです」
「eGFRが低下しています」
と指摘され、不安に感じていませんか。
尿蛋白や腎機能低下は、痛みや自覚症状がないことも多いため、つい様子を見てしまいがちです。しかし、腎臓の病気はかなり進行するまで症状が出にくいことがあり、健康診断での異常が早期発見のきっかけになることがあります。
特に、尿蛋白が続いている場合や、eGFRの低下がみられる場合は、慢性腎臓病(CKD)の可能性も考える必要があります。
この記事では、健診で尿蛋白・腎機能低下を指摘されたときに考えられる原因、再検査で確認すること、受診の目安についてわかりやすく解説します。
尿蛋白とは?
尿蛋白とは、尿の中にたんぱく質が出ている状態です。
本来、たんぱく質は体にとって大切な成分であり、腎臓のフィルターを通りにくいため、尿には多く出ないようになっています。ところが、腎臓のフィルターに負担がかかっていたり、腎臓に炎症や障害が起きていたりすると、尿の中にたんぱく質が漏れ出ることがあります。
尿蛋白は、健康診断では主に試験紙検査で調べられます。
結果は、
・陰性(−)
・弱陽性(±)
・陽性(+)
・2+
・3+
などで表記されることが多いです。
一度だけ尿蛋白が出たからといって、すぐに重い腎臓病と決まるわけではありません。発熱、脱水、激しい運動、体調不良、ストレスなどでも一時的に尿蛋白が出ることがあります。
一方で、尿蛋白が繰り返し陽性になる場合や、尿蛋白の量が多い場合は、腎臓の病気が隠れている可能性があるため注意が必要です。
腎機能低下とは?クレアチニン・eGFRとは?
健診で腎機能を見るときに重要なのが、血液検査の「クレアチニン」と「eGFR」です。
クレアチニンは、筋肉で作られる老廃物の一種です。通常は腎臓から尿へ排泄されますが、腎臓の働きが低下すると血液中にたまりやすくなります。
ただし、クレアチニンの値は筋肉量の影響も受けます。筋肉量が多い人では高めに出ることがあり、高齢者や筋肉量が少ない人では腎機能が低下していても目立ちにくいことがあります。
そこで、年齢・性別・クレアチニン値から腎臓の働きを推定する数値として使われるのが、eGFRです。
eGFRは、腎臓がどのくらい老廃物をろ過できているかを推定する指標です。一般的には、eGFRが低いほど腎機能が低下していると判断されます。
ただし、eGFRも一回の検査だけで判断するのではなく、過去の数値との比較や、尿蛋白の有無、血圧、糖尿病の有無などを合わせて評価することが大切です。
尿蛋白・腎機能低下で考える慢性腎臓病(CKD)とは
慢性腎臓病は、英語でChronic Kidney Diseaseといい、CKDと呼ばれます。
CKDは、腎臓の働きが慢性的に低下している、または尿蛋白など腎臓の障害を示す所見が続いている状態です。一般的には、腎機能低下や尿異常が3か月以上続く場合にCKDを考えます。
CKDが問題となるのは、腎機能が低下しても初期にはほとんど症状がないことです。
むくみ、息切れ、だるさ、食欲低下、尿量の変化などが出る頃には、腎機能低下が進んでいることもあります。そのため、健康診断で尿蛋白やeGFR低下を指摘された段階で、早めに確認しておくことが重要です。
また、CKDは腎臓だけの問題ではありません。高血圧、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中などとも関係します。
腎臓は全身の血管と深く関係しているため、腎機能低下は「血管への負担が続いているサイン」として捉えることも大切です。
尿蛋白・腎機能低下を放置しない方がよい理由
健診で指摘されても、症状がないと「また来年の健診で見ればいい」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、尿蛋白や腎機能低下を放置しない方がよい理由があります。
腎臓病は進行するまで症状が出にくい
腎臓は、ある程度機能が低下しても症状が出にくい臓器です。
「尿は普通に出ているから大丈夫」と思っていても、実際には腎機能が少しずつ低下していることがあります。
早い段階なら進行を抑えられることがある
腎機能の低下は、原因によっては進行を抑えられる可能性があります。
血圧管理、糖尿病の治療、脂質異常症の管理、減塩、体重管理、禁煙、薬剤の見直しなどによって、腎臓への負担を減らせる場合があります。
最近では、糖尿病の有無にかかわらず、条件に合うCKD患者さんで腎機能低下の進行抑制が期待される薬剤も使われるようになってきています。
心臓や血管の病気とも関係する
CKDがあると、心筋梗塞、心不全、脳卒中などのリスクにも注意が必要です。
腎臓の数値は、腎臓だけを見るものではなく、全身の血管や生活習慣病の状態を知る手がかりにもなります。
尿蛋白・腎機能低下の主な原因
尿蛋白や腎機能低下の原因は一つではありません。健診結果だけで原因を断定することはできないため、再検査や追加検査で確認します。
一時的な尿蛋白
尿蛋白は、病気ではなく一時的に出ることもあります。
たとえば、
・発熱
・脱水
・激しい運動後
・睡眠不足
・体調不良
・ストレス
・長時間立っていた後
などで一時的に尿蛋白が陽性になることがあります。
この場合、体調が落ち着いた状態で再検査をすると陰性になることもあります。
高血圧による腎臓への負担
高血圧が続くと、腎臓の細い血管に負担がかかります。
腎臓は血液をろ過する臓器であり、血圧の影響を強く受けます。高血圧が長く続くと、腎臓の血管が硬くなり、腎機能が徐々に低下することがあります。
健診で血圧も高い、尿蛋白も出ている、eGFRも低下しているという場合は、腎臓への負担が続いている可能性があります。
糖尿病による腎障害
糖尿病は、腎機能低下の重要な原因の一つです。
血糖が高い状態が続くと、腎臓の細かい血管に負担がかかり、尿蛋白やアルブミン尿が出ることがあります。糖尿病による腎障害は、初期には自覚症状が少ないため、定期的な尿検査・血液検査が大切です。
糖尿病を指摘されている方、HbA1cが高めの方、過去に血糖異常を指摘されたことがある方は、尿蛋白やeGFR低下を軽く見ないことが大切です。
腎炎・糸球体腎炎
尿蛋白に加えて尿潜血も陽性の場合、腎炎などの腎臓自体の病気が隠れていることがあります。
特に、
・尿蛋白が続く
・尿潜血も陽性
・若い方で尿異常が続いている
・むくみがある
・血圧が高い
といった場合は、腎臓専門医での評価が必要になることがあります。
薬剤の影響
痛み止め、漢方薬、サプリメント、一部の抗菌薬、造影剤などが腎機能に影響することがあります。
特に、もともと腎機能が低下している方、高齢の方、脱水になりやすい方では、薬の影響を受けやすくなることがあります。
普段飲んでいる薬や市販薬、サプリメントも含めて、診察時に伝えることが大切です。
加齢による腎機能低下
年齢とともにeGFRが少しずつ低下することはあります。
ただし、「年齢のせい」と決めつけてよいわけではありません。尿蛋白を伴っている場合、eGFRの低下が速い場合、高血圧や糖尿病がある場合は、腎臓病として評価が必要です。
尿の通り道の異常
尿路結石、前立腺肥大症、尿がうまく出ない状態、残尿が多い状態など、尿の通り道の問題が腎臓に負担をかけることもあります。
特に、
・尿が出にくい
・尿の勢いが弱い
・残尿感がある
・夜間頻尿がある
・血尿がある
・腰や背中の痛みがある
といった症状がある場合は、泌尿器科的な評価も重要です。
健診で指摘されたときに受診した方がよい目安
次のような場合は、一度医療機関で相談することをおすすめします。
・尿蛋白が「+」以上だった
・尿蛋白が「±」でも繰り返し指摘されている
・尿蛋白と尿潜血の両方を指摘された
・eGFRが60未満だった
・eGFRが以前より低下している
・クレアチニンが上昇している
・高血圧、糖尿病、脂質異常症がある
・むくみ、息切れ、だるさがある
・尿が泡立つ、血尿がある
・尿が出にくい、残尿感がある
・腎機能に影響する薬を飲んでいる
特に、尿蛋白がはっきり陽性の場合、尿蛋白と血尿を同時に指摘された場合、eGFRが大きく低下している場合、短期間で腎機能が悪化している場合は、早めの評価が必要です。
医療機関ではどのような検査をする?
健診で尿蛋白・腎機能低下を指摘された場合、医療機関では必要に応じて次のような確認を行います。
尿検査の再検査
まず、尿蛋白が本当に持続しているかを確認します。
体調、運動、脱水などの影響で一時的に陽性になっていることもあるため、再検査で確認することが重要です。
必要に応じて、尿蛋白の量をより詳しく評価するために、尿蛋白/クレアチニン比を調べることもあります。
尿潜血・尿沈渣の確認
尿蛋白だけでなく、尿潜血があるかどうかも重要です。
尿潜血を伴う場合、腎炎、尿路結石、尿路感染症、膀胱や腎臓の病気などを考える必要があります。
尿沈渣では、赤血球や白血球、円柱などを確認し、腎臓由来の異常か、尿路の異常かを判断する手がかりにします。
血液検査
血液検査では、クレアチニン、eGFR、尿素窒素、電解質、尿酸、血糖、HbA1c、脂質、貧血の有無などを確認します。
腎機能低下がある場合、カリウムなどの電解質異常や貧血を伴うこともあるため、全身状態を含めて評価します。
血圧測定
腎臓と血圧は密接に関係しています。
高血圧が腎機能を悪化させることもあれば、腎臓の病気によって血圧が上がることもあります。診察室での血圧だけでなく、家庭血圧の確認も大切です。
腹部超音波検査
必要に応じて、腎臓の形、大きさ、結石、水腎症、膀胱の状態、前立腺肥大、残尿などを超音波で確認します。
特に、尿の通り道に問題がある場合や、血尿を伴う場合には、画像検査が重要になることがあります。
尿蛋白・腎機能低下があるときの治療・生活上の注意
治療は、原因や腎機能の程度によって異なります。
大切なのは、「腎臓に良さそうなことを自己判断で始める」のではなく、原因を確認したうえで方針を決めることです。
血圧を適切に管理する
高血圧は腎臓に負担をかけます。
血圧が高い方では、減塩、体重管理、運動、飲酒量の見直し、必要に応じた薬物治療が重要です。
糖尿病をきちんと管理する
糖尿病がある場合、血糖管理は腎機能低下の予防に重要です。
HbA1cだけでなく、尿蛋白やアルブミン尿、eGFRの推移も見ながら、腎臓への影響を確認していきます。
塩分を控える
塩分のとりすぎは、血圧上昇やむくみにつながり、腎臓への負担を増やします。
外食、加工食品、漬物、汁物、麺類のスープなどは塩分が多くなりやすいため注意が必要です。
脱水を避ける
脱水は一時的に腎機能を悪化させることがあります。
特に、夏場、発熱時、下痢・嘔吐があるとき、高齢の方、利尿薬を使用している方では注意が必要です。
痛み止めや市販薬の使い方に注意する
一部の痛み止めは、腎機能に影響することがあります。
腎機能低下を指摘されている方は、市販薬を長期間使用する前に相談した方が安心です。
たんぱく質制限は自己判断で行わない
腎臓が悪いと聞くと、「たんぱく質を減らした方がよい」と考える方もいます。
しかし、過度なたんぱく質制限は栄養状態を悪化させることがあります。年齢、体格、腎機能、糖尿病の有無などによって適切な食事内容は異なります。
食事制限は自己判断ではなく、医師や管理栄養士と相談しながら行うことが大切です。
腎臓専門医への紹介が必要になることもあります
尿蛋白や腎機能低下の程度によっては、腎臓専門医での詳しい評価が必要になることがあります。
たとえば、
・尿蛋白が多い
・尿蛋白と尿潜血が両方陽性
・eGFRが大きく低下している
・短期間で腎機能が悪化している
・若い方で腎機能低下がある
・むくみや高血圧を伴う
・腎炎が疑われる
といった場合です。
一方で、すべての方が最初から腎臓専門医を受診しなければならないわけではありません。
まずは内科で再検査を行い、尿蛋白が持続しているか、eGFRがどの程度か、血圧や糖尿病などの背景があるかを確認し、必要に応じて腎臓専門医と連携していく流れが一般的です。
尿の出にくさ、残尿感、血尿、尿路結石、前立腺肥大症などが疑われる場合には、泌尿器科での評価が必要になることもあります。
よくある質問
尿蛋白が「±」でした。受診した方がよいですか?
尿蛋白「±」は、軽い異常として出ることがあります。一度だけであれば、体調や運動、脱水の影響で一時的に出た可能性もあります。
ただし、尿蛋白「±」が繰り返し出ている場合や、尿潜血、血圧高値、糖尿病、eGFR低下を伴う場合は、一度確認しておくことをおすすめします。
eGFRが少し低いだけでも問題ですか?
eGFRは年齢とともに低下することがあります。そのため、軽度の低下がすぐに重い病気を意味するわけではありません。
ただし、以前より低下している、尿蛋白を伴っている、糖尿病や高血圧がある、若い年齢で低下している場合は注意が必要です。
水をたくさん飲めば腎機能は改善しますか?
脱水が原因で一時的に腎機能が悪化している場合は、水分摂取で改善することがあります。
しかし、慢性的な腎機能低下がある場合、水をたくさん飲めば治るわけではありません。むくみや心不全がある方では、水分のとりすぎが問題になることもあります。
水分摂取の量は、腎機能や持病によって適切な量が異なります。
尿が泡立つのは尿蛋白のサインですか?
尿が泡立つからといって、必ず尿蛋白があるとは限りません。
尿の勢いや便器の状態によって泡立つこともあります。ただし、泡がなかなか消えない、尿蛋白を指摘されている、むくみがある場合は、尿検査で確認することが大切です。
何科を受診すればよいですか?
まずは内科で相談するのが一般的です。
尿蛋白、eGFR、クレアチニン、血圧、糖尿病、脂質異常症などを総合的に確認します。
血尿、尿路結石、尿の出にくさ、残尿感、前立腺肥大症などが疑われる場合は、泌尿器科での評価が必要になることもあります。
まとめ|健診で尿蛋白・腎機能低下を指摘されたら、早めに確認を
尿蛋白や腎機能低下は、症状がないまま進行することがあります。
一度だけの異常であれば一時的な変化のこともありますが、尿蛋白が続く場合、eGFRが低下している場合、尿潜血や高血圧・糖尿病を伴う場合は、放置せずに確認することが大切です。
腎臓の病気は、早い段階で見つけて、血圧や糖尿病、生活習慣、薬の影響などを整えることで、進行を抑えられる可能性があります。
健康診断で「尿蛋白」「腎機能低下」「クレアチニン高値」「eGFR低下」を指摘された方は、結果をそのままにせず、一度医療機関でご相談ください。