2026年5月26日

子どもの予防接種は、感染症からお子さんの体を守るためにとても大切な医療です。
一方で、保護者の方からは、
「どのワクチンをいつ受ければよいの?」
「同時接種は大丈夫?」
「副反応が心配」
「熱があるときは受けられる?」
「子どもが注射を怖がっていて心配」
といった相談を受けることがあります。
予防接種は、ただ予定通りに打つだけではなく、何のために受けるのか、どのような副反応があり得るのか、接種後に何に注意すればよいのかを保護者の方が理解したうえで受けることが大切です。
このページでは、子どもの予防接種を受ける前に知っておきたい基本的な内容を、できるだけわかりやすくまとめます。
子どもの予防接種は、病気から守るための大切な準備です
予防接種は、感染症にかかることを完全にゼロにするものではありません。
しかし、ワクチンによって免疫をつけることで、感染症にかかりにくくしたり、かかった場合でも重症化を防いだりする効果が期待できます。
特に乳幼児は、感染症にかかったときに重症化しやすいことがあります。
たとえば、百日せき、Hib感染症、肺炎球菌感染症、麻しん、風しん、水痘、日本脳炎などは、重症化すると入院が必要になったり、後遺症につながったりすることがあります。
予防接種は、「入園や入学のために仕方なく受けるもの」ではありません。
お子さん本人を守るため、そして周囲の子どもや家族、地域の人たちを感染症から守るための大切な手段です。
厚生労働省も、ワクチン接種によって多くの人が免疫を獲得できる一方で、ワクチンの種類によって免疫のつき方や持続期間が異なると説明しています。つまり、決められた時期に、必要な回数を受けることが大切です。
小児の予防接種はいつから始まる?
小児の予防接種は、一般的に生後2か月頃から本格的に始まります。
生後2か月から接種が始まる主なワクチンには、ロタウイルスワクチン、5種混合ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンなどがあります。これらは乳児期の早い段階から接種が推奨されており、感染症の発症や重症化を防ぐために大切なワクチンです。厚生労働省も、生後2か月から推奨される予防接種として、これらのワクチンを紹介しています。
特に乳児期は、短い期間に複数のワクチンを接種する必要があります。接種開始が遅れると、その後のスケジュールも後ろにずれやすくなるため、生後2か月を迎える前から、予防接種の予定を確認しておくことが大切です。
予防接種のスケジュールは、ワクチンの種類ごとに接種開始時期、接種回数、接種間隔が異なります。また、制度や推奨内容が変更されることもあるため、最新のスケジュールもあわせて確認しておくと安心です。
最新の予防接種スケジュールについては、以下の情報も参考になります。
・日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール
・厚生労働省:生後2か月から推奨される予防接種
日本小児科学会は、2026年4月1日版の予防接種スケジュールを公開しており、標準的な接種時期や接種間隔、接種が遅れた場合の考え方などを示しています。
実際の接種スケジュールは、お子さんの年齢、これまでの接種歴、自治体から届く予診票・接種券の内容によって異なります。接種を受ける際は、母子健康手帳を確認しながら、接種漏れがないように進めていきましょう。
定期接種と任意接種の違い
子どものワクチンには、大きく分けて定期接種と任意接種があります。
定期接種は、予防接種法に基づいて対象年齢や接種期間が定められているワクチンです。対象年齢内であれば、公費負担により自己負担なし、または少ない負担で受けられることが一般的です。
一方、任意接種は、法律上の定期接種ではないものの、感染症予防のために重要なワクチンです。費用は自己負担となることが多いですが、自治体によっては助成がある場合もあります。
代表的な例として、おたふくかぜワクチンなどは任意接種に分類されます。
日本小児科学会は、おたふくかぜワクチンについて、予防効果を確実にするために2回接種が必要であり、1回目は1歳を過ぎたら早期に、2回目は小学校入学前の時期に接種することを推奨しています。
「任意接種」と聞くと、「受けなくてもよいワクチン」と受け取られることがありますが、必ずしもそうではありません。
任意接種であっても、病気の予防や重症化予防の観点から接種が勧められるものがあります。
予防接種を受ける前に確認しておきたいこと
予防接種を安全に受けるためには、接種前の確認が大切です。
接種前には、次のようなことを確認しましょう。
・今日の体調は普段と変わりないか
・発熱、咳、鼻水、下痢、嘔吐などがないか
・最近、感染症にかかったり、感染症の人と接触したりしていないか
・これまでの予防接種で強い副反応がなかったか
・薬や食べ物で強いアレルギーを起こしたことがないか
・けいれん、免疫の病気、心臓病、腎臓病などの持病がないか
・現在飲んでいる薬がないか
厚生労働省の定期接種実施要領では、接種前に問診、検温、視診、聴診などの診察を行い、予防接種を受けることが適当でない状態や、注意が必要な状態に該当しないかを確認することとされています。
また、乳幼児・小児の定期接種では、接種前に母子健康手帳の提示を求めることも定められています。
母子健康手帳は、これまでの接種歴を確認するために非常に重要です。
予防接種を受ける日は、必ず持参しましょう。
当日の持ち物と受診の流れ
予防接種当日は、以下のものを持参してください。
・母子健康手帳
・予診票
・健康保険証またはマイナ保険証
・子ども医療費受給者証
・診察券
・お薬手帳
・替えのおむつ、ミルク、飲み物など必要なもの
当日の一般的な流れは、次の通りです。
まず受付で、母子健康手帳と予診票を確認します。
その後、体温測定や問診を行い、医師が診察して接種できる状態かを判断します。問題がなければ、ワクチンの種類、接種部位、接種後の注意点などを確認したうえで接種します。
接種後は、しばらく院内またはすぐに医療機関へ連絡できる状態で様子を見ます。
特に接種直後は、まれにアレルギー反応などが起こることがあるため、急いで帰らず、お子さんの様子を確認することが大切です。
定期接種実施要領では、予防接種の有効性・安全性、通常起こり得る副反応、まれに生じる重い副反応、健康被害救済制度について、保護者が理解できるよう適切に説明し、同意を得たうえで接種を行うことが示されています。
同時接種は大丈夫?
乳幼児期は、受けるべきワクチンの種類が多く、1本ずつ別の日に接種していると、必要な免疫をつけるまでに時間がかかってしまうことがあります。
そのため、複数のワクチンを同じ日に接種する同時接種が行われることがあります。
同時接種の目的は、必要なワクチンを適切な時期に受け、早く免疫をつけることです。
また、通院回数を減らし、接種忘れを防ぐというメリットもあります。
日本小児科学会は、特に乳児期には多くのワクチン接種が複数回必要であり、ワクチンで予防できる病気から子どもを守るためには、必要なワクチンを適切な時期に適切な回数接種することが重要であるとしています。
また、厚生労働省は、異なる種類のワクチンを接種する際の接種間隔について、注射生ワクチン同士では27日以上あける必要がある一方、それ以外のワクチンの組み合わせでは一律の日数制限を設けないことを示しています。ただし、接種後数日間は発熱や接種部位の腫れが出ることがあるため、体調がよいことを確認し、医師に相談したうえで接種することが大切です。
同時接種を行うかどうかは、お子さんの年齢、体調、これまでの接種歴、保護者の不安などを踏まえて判断します。
不安がある場合は、遠慮なく相談してください。
予防接種後に起こりやすい副反応
予防接種後には、副反応が起こることがあります。
よくみられる副反応には、次のようなものがあります。
・注射した部位の赤み
・腫れ
・しこり
・痛み
・発熱
・機嫌が悪い
・眠そうにする
・食欲が少し落ちる
多くの場合、これらの症状は一時的で、数日以内に落ち着きます。
厚生労働省は、ワクチンによる副反応について、多くは発熱や注射部位の腫れなど比較的軽く、短期間で治るものと説明しています。一方で、ごくまれに重いアレルギーなどの重症の副反応が起こることがあるため、接種後の様子を見ることが大切です。
特に注意したい症状は、次のような場合です。
・呼吸が苦しそう
・顔色が悪い
・ぐったりしている
・意識がぼんやりしている
・じんましんが広がっている
・繰り返し吐く
・高熱が続く
・けいれんを起こした
・接種部位の腫れが強く、痛みも強い
・いつもと明らかに様子が違う
このような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
接種後の過ごし方と注意点
予防接種を受けた日は、普段通りに過ごして構いませんが、無理は避けましょう。
接種後は、以下の点に注意してください。
・接種部位を強くこすらない
・当日は激しい運動を避ける
・体調の変化がないか様子を見る
・発熱、腫れ、機嫌の変化などを確認する
・いつもと違う様子があれば医療機関に相談する
厚生労働省の定期接種実施要領でも、接種後は接種部位を清潔に保ち、接種当日は過激な運動を避けること、接種局所の異常反応や体調の変化がある場合には速やかに医師の診察を受けることが示されています。
入浴については、体調がよければ可能なことが多いですが、接種部位を強くこすらないようにしてください。
熱がある、ぐったりしている、機嫌がかなり悪いなどの場合は、無理に入浴せず様子を見ましょう。
このような場合は接種前に相談しましょう
次のような場合は、接種できるかどうかを事前に相談しましょう。
・発熱している
・咳、鼻水、下痢、嘔吐などの症状が強い
・いつもより元気がない
・最近、感染症にかかった
・周囲に感染症の人がいる
・過去の予防接種で強い副反応があった
・薬や食品でアナフィラキシーを起こしたことがある
・けいれんを起こしたことがある
・免疫に関わる病気がある
・ステロイドや免疫を抑える薬を使用している
・心臓、腎臓、肝臓、血液、神経などの病気で通院している
予防接種は、体調がよいときに受けるのが基本です。
「少し鼻水があるけれど大丈夫か」「前日に熱があったが接種できるか」など、判断に迷う場合は、接種前に相談してください。
無理に予定通り接種することよりも、安全に接種できる状態かを確認することが大切です。
注射を怖がる子どもへの声かけ
3〜5歳頃になると、子どもは注射への恐怖を言葉で表現できるようになります。
「痛いのが嫌」「怖い」「行きたくない」と泣いたり、逃げようとしたりすることもあります。
このようなときに大切なのは、子どもの不安を否定しないことです。
「怖くないよ」
「泣かないで」
「すぐ終わるから我慢して」
と言いたくなる場面もありますが、子どもにとっては本当に怖い体験です。
まずは、
「注射が怖いんだね」
「痛いのが嫌なんだね」
「頑張ろうとしているの、わかっているよ」
と気持ちを受け止めてあげることが大切です。
そのうえで、
「病気から体を守るための注射だよ」
「終わったら一緒に深呼吸しよう」
「腕を動かさないようにすると、早く終わるよ」
「終わったらたくさんほめるね」
と、何をするのか、どうすればよいのかを短く伝えてあげましょう。
予防接種は、子どもを脅して受けさせるものではありません。
子どもが怖がっている場合でも、できるだけ安心できる言葉で説明し、保護者と医療者が協力して進めることが大切です。
よくある質問
予防接種の日に少し鼻水があります。受けられますか?
軽い鼻水だけで、発熱がなく、元気や食欲が普段通りであれば接種できることもあります。
ただし、咳が強い、熱がある、ぐったりしている、下痢や嘔吐があるなどの場合は、延期を検討することがあります。診察時に体調を確認して判断します。
予防接種後に熱が出たらどうすればよいですか?
接種後に発熱することはあります。
水分が取れていて、機嫌が大きく悪くなく、呼吸も苦しそうでなければ、まずは安静にして様子を見ることが多いです。
ただし、高熱が続く、ぐったりしている、けいれんを起こした、呼吸が苦しそう、顔色が悪いなどの場合は、早めに医療機関へ相談してください。
接種したところが腫れています。大丈夫ですか?
接種部位の赤み、腫れ、しこり、痛みは比較的よくみられる副反応です。
多くは数日で自然に落ち着きます。
腫れが非常に強い、痛みが強い、腕全体が大きく腫れる、発熱や全身状態の悪化を伴う場合は、医療機関へ相談してください。
予防接種後にお風呂に入ってもよいですか?
体調がよければ、入浴は可能なことが多いです。
ただし、接種部位を強くこすらないようにしてください。発熱している、ぐったりしている、機嫌がかなり悪い場合は、無理に入浴せず様子を見ましょう。
母子健康手帳を忘れた場合、接種できますか?
母子健康手帳は、これまでの接種歴を確認するために重要です。
接種間隔や接種回数を正確に確認できない場合、安全のために接種を延期することがあります。予防接種の日は、必ず母子健康手帳を持参してください。
予防接種を受け忘れてしまいました。もう遅いですか?
受け忘れがあっても、年齢やワクチンの種類によっては接種できる場合があります。
ただし、ワクチンごとに接種できる年齢や間隔が決まっています。母子健康手帳を確認し、接種歴に応じてスケジュールを立て直しましょう。
日本小児科学会は、接種が遅れた場合のキャッチアップスケジュールも示しています。受け忘れに気づいた場合は、そのままにせず相談することが大切です。
まとめ
子どもの予防接種は、感染症からお子さんを守るために大切な医療です。
特に乳幼児期は、生後2か月頃から複数のワクチン接種が始まります。
スケジュールが複雑になりやすいため、母子健康手帳を確認しながら、接種漏れがないように進めていきましょう。
予防接種を受ける前には、体調、過去の副反応、アレルギー、持病、内服薬などを確認することが大切です。
接種後は、発熱や接種部位の腫れなどが出ることがありますが、多くは一時的です。ただし、ぐったりしている、呼吸が苦しそう、けいれんを起こした、強いアレルギー症状があるなどの場合は、早めに医療機関へ相談してください。
予防接種は、子どもを怖がらせたり、脅したりして受けさせるものではありません。
保護者の方が目的や副反応を理解し、お子さんの不安にも寄り添いながら、安全に進めていくことが大切です。
予防接種のスケジュールや受け忘れ、副反応について不安がある場合は、母子健康手帳を持参のうえ、医療機関へご相談ください。
参考情報
本記事は、厚生労働省の予防接種・ワクチン情報、定期接種実施要領、日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール等を参考に作成しています。