2026年7月30日

健康診断で「HbA1cが高い」「糖尿病予備群です」「内科を受診してください」と言われ、不安になっている方は少なくありません。
HbA1cは、血糖値と並んで糖尿病の発見や血糖コントロールの評価に使われる大切な検査です。血糖値は食事の影響を受けやすい一方、HbA1cは直前の食事の影響を受けにくく、過去1〜2か月程度の平均的な血糖状態を反映する指標とされています。
HbA1cが高い状態を放置すると、糖尿病へ進行したり、すでに糖尿病が隠れていたりする可能性があります。初期の糖尿病は自覚症状が乏しいことも多いため、「症状がないから大丈夫」と判断せず、健診結果をきっかけに早めに確認することが大切です。
HbA1cとは?
HbA1cは「ヘモグロビン・エーワンシー」と読みます。血液中のヘモグロビンにブドウ糖が結合したものの割合を示す検査で、血糖値が高い状態が続くほどHbA1cも高くなります。
血糖値は採血直前の食事、飲み物、運動、体調などの影響を受けやすい検査です。一方でHbA1cは、過去1〜2か月の平均的な血糖状態を反映するため、健康診断や糖尿病の経過観察でよく使われます。
ただし、HbA1cだけですべてが判断できるわけではありません。日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドラインでは、糖尿病の診断はHbA1cだけでなく、血糖値、症状、既往歴、体重変化、家族歴などを踏まえて総合的に判断するとされています。
HbA1cが高いとはどのくらい?数値ごとの目安
健診結果では、HbA1cの数値によって「基準範囲内」「保健指導判定値」「受診勧奨判定値」などと表示されることがあります。
目安としては、以下のように考えるとわかりやすいです。
| HbA1c | 考え方の目安 |
|---|---|
| 5.5%以下 | 基準範囲内とされることが多い |
| 5.6〜5.9% | 糖尿病予備群として注意が必要な段階 |
| 6.0〜6.4% | 糖尿病の可能性も考え、医療機関での評価が望ましい段階 |
| 6.5%以上 | 糖尿病が強く疑われ、早めの受診が必要な段階 |
厚生労働省の情報では、空腹時血糖100mg/dL以上またはHbA1c 5.6%以上は将来糖尿病になりやすい「糖尿病予備群」とされ、空腹時血糖126mg/dL以上またはHbA1c 6.5%以上では糖尿病の可能性が高いとされています。
また、日本糖尿病学会のガイドラインでは、HbA1c 6.5%以上は「糖尿病型」の基準の一つとされています。ただし、HbA1cだけが高い場合、HbA1cの再検査だけで糖尿病と診断するのではなく、血糖値による確認も必要です。
HbA1cが5.6〜5.9%の場合
HbA1c 5.6〜5.9%は、まだ糖尿病と診断される数値ではありませんが、将来的に血糖値が悪化しやすい段階です。
この時点では、食事、運動、体重、飲酒、間食、甘い飲み物などの生活習慣を見直すことで、糖尿病への進行を防げる可能性があります。日本糖尿病学会のガイドラインでも、HbA1c 5.6〜5.9%の場合には、必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷試験、いわゆるOGTTの実施を検討することが望ましいとされています。
特に、以下に当てはまる方は一度医療機関で相談すると安心です。
- 家族に糖尿病の方がいる
- 体重が増えてきた
- 血圧やコレステロールも高い
- 尿糖を指摘された
- 妊娠糖尿病を指摘されたことがある
- 以前より健診結果が悪化している
- 「まだ軽いから大丈夫」と放置するよりも、早めに生活習慣を整えることが大切です。
HbA1cが6.0〜6.4%の場合
HbA1c 6.0〜6.4%は、糖尿病の一歩手前、または糖尿病が隠れている可能性がある段階です。
日本糖尿病学会のガイドラインでは、HbA1c 6.0〜6.4%の場合、明らかな糖尿病の症状がない場合を除き、OGTTが強く推奨される場合に含まれています。OGTTは、ブドウ糖を含む飲み物を飲んだ後の血糖値の変化を調べる検査で、空腹時血糖やHbA1cだけではわかりにくい「食後高血糖」や「境界型糖尿病」の評価に役立ちます。
HbA1c 6.0%台前半では、症状がないことも多いですが、食後の血糖値が大きく上がっている場合があります。健診でHbA1c 6.0%以上を指摘された場合は、自己判断で様子を見るよりも、医療機関で再検査を受けることをおすすめします。
HbA1cが6.5%以上の場合
HbA1c 6.5%以上は、糖尿病が強く疑われる数値です。
日本糖尿病学会の糖尿病診断基準では、HbA1c 6.5%以上、空腹時血糖126mg/dL以上、75g OGTT 2時間値200mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上などが「糖尿病型」の基準とされています。別の日に行った検査で糖尿病型が2回以上確認され、そのうち1回は必ず血糖値で確認することが必要です。
一方で、血糖値とHbA1cが同じ採血でどちらも糖尿病型を示した場合は、1回の検査でも糖尿病と診断できる場合があります。また、口渇、多飲、多尿、体重減少などの典型的な症状があり、血糖値が糖尿病型を示す場合も、診断につながることがあります。
HbA1c 6.5%以上を指摘された場合は、できるだけ早めに内科、糖尿病内科、生活習慣病を診療している医療機関を受診しましょう。
HbA1cが高い状態を放置するとどうなる?
糖尿病で本当に問題になるのは、血糖値やHbA1cの数字そのものだけではありません。高血糖が続くことで、血管や神経に負担がかかり、合併症につながることが問題です。
糖尿病は初期にはほとんど症状がありませんが、進行すると動脈硬化が進み、脳卒中や虚血性心疾患のリスクが高まります。また、糖尿病の3大合併症として、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病神経障害があり、進行すると視力低下、失明、透析、足のしびれや痛みなどにつながることがあります。
「何も症状がないから大丈夫」と感じている時期こそ、早めに確認しておくことが大切です。
医療機関ではどのような検査をする?
健診でHbA1cが高いと言われた場合、医療機関では必要に応じて以下のような検査を行います。
血糖値の確認
空腹時血糖、随時血糖、場合によっては食後血糖を確認します。HbA1cだけでなく、実際の血糖値を確認することで、糖尿病型かどうかを判断しやすくなります。
HbA1cの再検査
健診時の数値が一時的なものなのか、継続して高いのかを確認します。HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映するため、治療や生活習慣改善の効果判定にも使われます。
尿検査
尿糖、尿蛋白などを確認します。糖尿病性腎症や慢性腎臓病の評価につながることがあります。
腎機能・肝機能・脂質の検査
糖尿病は高血圧、脂質異常症、脂肪肝、慢性腎臓病などと関連していることがあります。採血で腎機能、肝機能、コレステロール、中性脂肪などを確認します。
必要に応じたOGTT
HbA1c 6.0〜6.4%、空腹時血糖110〜125mg/dL、随時血糖140〜199mg/dLなどでは、OGTTが強く推奨される場合があります。HbA1c 5.6〜5.9%でも、糖尿病の家族歴、肥満、脂質異常症などがある場合には、OGTTを検討することがあります。
HbA1cが高いときの治療の流れ
HbA1cが高い場合、治療は数値だけで決めるものではありません。年齢、体重、血糖値、腎機能、合併症の有無、生活状況、低血糖のリスクなどを総合的に考えて方針を決めます。
まずは生活習慣の見直し
糖尿病や糖尿病予備群では、食事療法と運動療法が基本になります。
糖尿病の食事は、特別な食事をするというより、適正なエネルギー量を意識し、主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスの良い食事を続けることが基本です。食物繊維の多い食品を取り入れ、脂質や食塩を控え、1日3食を規則正しく食べることも大切です。
運動療法では、有酸素運動と筋力トレーニングの両方が勧められます。一般的には、週150分以上、週3回以上の中等度の有酸素運動や、週2〜3回のレジスタンス運動が目安とされています。ただし、心臓病、腎臓病、網膜症、足のしびれや痛みがある方は、運動の内容を医師と相談して決める必要があります。
必要に応じて薬物療法を検討
生活習慣の改善だけで血糖コントロールが不十分な場合や、最初から血糖値が高い場合には、飲み薬や注射薬を使うことがあります。
糖尿病の薬にはさまざまな種類があり、血糖値を下げる仕組み、副作用、体重への影響、腎機能への配慮などが異なります。そのため、自己判断で薬を避けたり、逆に薬だけに頼ったりするのではなく、生活習慣と薬物療法を組み合わせて考えることが大切です。
HbA1cの治療目標
日本糖尿病学会の血糖コントロール目標では、合併症予防のためのHbA1c目標は7.0%未満とされています。一方で、血糖正常化を目指す場合は6.0%未満、低血糖などの理由で治療強化が難しい場合は8.0%未満が目標となることがあります。治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定します。
つまり、「全員が同じHbA1cを目指す」のではなく、その人にとって安全で継続しやすい目標を設定することが重要です。
今日からできる生活習慣の見直し
健診でHbA1cが高いと言われたら、まずは次のような点を見直してみましょう。
甘い飲み物を控える
砂糖入りの缶コーヒー、清涼飲料水、スポーツドリンク、ジュースなどは、血糖値を急激に上げやすい飲み物です。まずは水、お茶、無糖コーヒーなどに置き換えることから始めましょう。
主食の量を見直す
ご飯、パン、麺類などの主食は血糖値に影響します。ただし、極端に主食を抜く必要はありません。量を整え、野菜、たんぱく質、汁物などと組み合わせることが大切です。
夜遅い食事・間食を減らす
夜遅い食事、食後のデザート、だらだら食べる習慣は、血糖コントロールを悪化させることがあります。夕食の時間、間食の頻度、菓子類の量を見直してみましょう。
体を動かす機会を増やす
いきなり激しい運動を始める必要はありません。まずは、食後に10〜15分歩く、階段を使う、座りっぱなしの時間を減らすなど、続けやすい方法から始めるとよいでしょう。
体重を記録する
体重が増えてきたタイミングでHbA1cが上がる方もいます。毎日でなくても、週に数回体重を測ることで、生活習慣の変化に気づきやすくなります。
HbA1cが高いときによくある質問
Q. HbA1cが高いだけで糖尿病ですか?
HbA1c 6.5%以上は糖尿病型の基準の一つですが、HbA1cだけで糖尿病と確定するわけではありません。糖尿病の診断では、血糖値による確認や再検査が必要になります。HbA1cのみの反復検査だけでは糖尿病の診断はできないとされています。
Q. 健診前に食事をしたからHbA1cが高くなったのでしょうか?
HbA1cは直前の食事の影響を受けにくく、過去1〜2か月の平均的な血糖状態を反映します。そのため、健診当日の食事だけで大きく変わる検査ではありません。
Q. やせていてもHbA1cが高くなることはありますか?
あります。肥満は糖尿病のリスクになりますが、日本人では肥満や過体重がなくても糖尿病になりやすい方がいるとされています。体型だけで判断せず、健診結果をもとに確認することが大切です。
Q. HbA1cはどれくらいで下がりますか?
HbA1cは過去1〜2か月の血糖状態を反映するため、生活習慣を改善してもすぐに大きく変わるとは限りません。一般的には、1〜3か月程度の間隔で再検査し、変化を確認していきます。
Q. 何科を受診すればよいですか?
内科、糖尿病内科、生活習慣病を診療している医療機関で相談できます。健診結果の用紙を持参すると、過去の数値との比較や必要な検査の判断がしやすくなります。
受診時に持っていくとよいもの
受診時には、以下のものを持参すると診察がスムーズです。
- 健康診断の結果用紙
- 過去の健診結果
- 現在飲んでいる薬の情報
- お薬手帳
- 体重の変化がわかる情報
- 家族に糖尿病の方がいるかどうかの情報
HbA1cだけでなく、血糖値、尿検査、腎機能、脂質、血圧、体重などを合わせて確認することで、糖尿病の有無や今後の対策を考えやすくなります。
まとめ|HbA1cが高いと言われたら、症状がなくても早めに確認を
HbA1cが高いと言われても、すぐに重い糖尿病という意味ではありません。しかし、糖尿病予備群や糖尿病の可能性を早めに見つける大切なサインです。
特に、HbA1c 5.6%以上では将来の糖尿病リスクを意識した生活習慣の見直しが必要です。HbA1c 6.0%以上では医療機関での評価を検討し、HbA1c 6.5%以上では糖尿病が強く疑われるため、早めの受診がすすめられます。
糖尿病は初期には症状が乏しい一方で、放置すると網膜症、腎症、神経障害、脳卒中、心筋梗塞などの合併症につながることがあります。健診でHbA1cが高いと言われた方は、「まだ症状がないから大丈夫」と放置せず、早めに内科で相談しましょう。