2026年8月05日

はじめに
健康診断で「LDLコレステロールが高い」「悪玉コレステロールが高い」「脂質異常症の疑い」と指摘され、不安に感じている方は少なくありません。
LDLコレステロールは、いわゆる「悪玉コレステロール」と呼ばれる血液中の脂質の一つです。LDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の壁にコレステロールがたまりやすくなり、動脈硬化が進行する原因になります。
動脈硬化は、すぐに症状が出るとは限りません。しかし、進行すると心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの重大な病気につながることがあります。
一方で、LDLコレステロールが高いからといって、すぐに薬が必要になるとは限りません。年齢、性別、血圧、糖尿病の有無、喫煙歴、腎機能、心筋梗塞や脳梗塞の既往などを含めて、総合的に判断することが大切です。
この記事では、健診でLDLコレステロールが高いと言われたときに知っておきたい原因、受診の目安、検査、治療について解説します。
LDLコレステロールとは?
LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割を持っています。コレステロール自体は、細胞膜やホルモンの材料として必要な成分です。
しかし、LDLコレステロールが多すぎる状態が続くと、血管の壁に入り込み、動脈硬化を進める原因になります。そのため、LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれることがあります。
反対に、HDLコレステロールは血管などに余ったコレステロールを回収する働きがあり、「善玉コレステロール」と呼ばれます。
ただし、「善玉」「悪玉」という言葉はあくまでわかりやすくするための表現です。大切なのは、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪などを含めて、血管の病気のリスクを総合的に評価することです。
LDLコレステロールはいくつから高い?
一般的に、LDLコレステロールは以下のように判断されます。
| LDLコレステロール値 | 判定・対応の目安 |
|---|---|
| 120mg/dL未満 | 基準範囲内 |
| 120〜139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 |
| 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| 180mg/dL以上 | 家族性高コレステロール血症なども考慮する値 |
LDLコレステロールが140mg/dL以上の場合は、脂質異常症として評価が必要です。
また、120〜139mg/dLの「境界域」であっても、高血圧、糖尿病、喫煙、慢性腎臓病、家族歴などがある場合は、治療が必要になることがあります。
つまり、「LDLが何mg/dLだから必ず薬」という単純な判断ではなく、その方の動脈硬化リスクに応じて対応を考えることが重要です。
LDLコレステロールが高いと何が問題?
動脈硬化が進みやすくなる
LDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の内側にコレステロールがたまり、血管が硬く、狭くなっていきます。これが動脈硬化です。
動脈硬化は、全身の血管で起こります。特に問題となるのは、心臓や脳の血管です。
心筋梗塞・狭心症のリスク
心臓の血管である冠動脈に動脈硬化が起こると、血管が狭くなり、胸の痛みや息切れを起こすことがあります。これが狭心症です。
さらに血管が詰まると、心筋梗塞を起こすことがあります。心筋梗塞は命に関わる病気であり、LDLコレステロールの管理は予防のために重要です。
脳梗塞のリスク
脳の血管や、脳へ血液を送る血管に動脈硬化が起こると、脳梗塞の原因になることがあります。
特に、高血圧、糖尿病、喫煙などが重なると、血管への負担が大きくなり、脳梗塞のリスクが高まります。
LDLコレステロールが高くても症状は出にくい
LDLコレステロールが高くても、多くの場合、自覚症状はありません。
「体調は悪くないから大丈夫」
「痛みもないから様子を見よう」
「健診で言われただけだから急がなくてもよい」
このように考えてしまう方もいます。
しかし、LDLコレステロールが高い状態は、症状がないまま血管に負担をかけ続けます。そして、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞として発症することがあります。
脂質異常症の治療は、今ある症状を取るためというより、将来の大きな病気を予防するための治療です。
LDLコレステロールが高くなる原因
食生活の影響
LDLコレステロールが高くなる原因の一つに、食生活があります。
特に、肉の脂身、バター、生クリーム、チーズ、揚げ物、加工食品、菓子類などを多く摂る食生活では、LDLコレステロールが上がりやすくなることがあります。
また、食事全体のカロリーが多く、体重が増えている場合も、脂質異常症につながりやすくなります。
運動不足・体重増加
運動不足や内臓脂肪の増加も、脂質異常症の原因になります。
特に、体重が増えた時期とLDLコレステロールの上昇が重なっている場合は、生活習慣の影響を考えます。
遺伝的な体質
LDLコレステロールは、生活習慣だけでなく遺伝的な体質の影響も受けます。
食事に気をつけていてもLDLコレステロールが高い方や、若い頃から高値が続いている方、家族に心筋梗塞や狭心症を若くして発症した人がいる方では、家族性高コレステロール血症の可能性も考えます。
加齢・閉経
年齢とともにLDLコレステロールが上がりやすくなることがあります。
特に女性では、閉経後にLDLコレステロールが上昇することがあります。これまで健診で問題がなかった方でも、40代後半以降に数値が変化してくることがあります。
他の病気や薬の影響
甲状腺機能低下症、糖尿病、慢性腎臓病、ネフローゼ症候群、肝臓や胆道の病気などが、LDLコレステロール高値の原因になることがあります。
また、使用中の薬が脂質に影響する場合もあります。
そのため、LDLコレステロールが高いときは、単に「食べすぎ」と決めつけず、背景に他の病気がないか確認することも大切です。
受診した方がよい目安
次のような場合は、医療機関で相談することをおすすめします。
LDLコレステロールが140mg/dL以上
LDLコレステロールが140mg/dL以上の場合は、高LDLコレステロール血症として評価が必要です。
一度の健診結果だけで判断しきれないこともありますが、放置せず、再検査やリスク評価を受けることが大切です。
LDLコレステロールが180mg/dL以上
LDLコレステロールが180mg/dL以上の場合は、生活習慣だけでなく、家族性高コレステロール血症などの体質的な要因も考える必要があります。
特に、若い頃からLDLが高い、家族に心筋梗塞や狭心症を若くして発症した人がいる、アキレス腱が太い、手足やまぶたに黄色っぽいしこりがある、という場合は注意が必要です。
高血圧・糖尿病・慢性腎臓病がある
LDLコレステロールの数値が極端に高くなくても、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病がある方では、動脈硬化のリスクが高くなります。
このような場合は、LDLコレステロールをより厳格に管理する必要があることがあります。
喫煙している
喫煙は動脈硬化を進める大きな要因です。
LDLコレステロール高値に喫煙が重なると、血管の病気のリスクが高まります。健診でLDL高値を指摘された場合は、禁煙も含めて相談することが重要です。
心筋梗塞・狭心症・脳梗塞の既往がある
心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などを起こしたことがある方では、再発予防のためにLDLコレステロールをより低く管理することが重要です。
自己判断で薬を中止したり、健診結果をそのままにしたりせず、継続的な管理が必要です。
すぐに救急受診が必要な症状
LDLコレステロールが高いこと自体で急に症状が出るわけではありません。
しかし、次のような症状がある場合は、心筋梗塞や脳卒中などの可能性があるため、すぐに救急受診を検討してください。
- 強い胸の痛み、胸の圧迫感
- 冷や汗を伴う胸の苦しさ
- 突然の息切れ
- 片側の手足の麻痺
- ろれつが回らない
- 顔の片側が下がる
- 突然の激しい頭痛
- 急な視野の異常
強い胸の痛み、胸の圧迫感 冷や汗を伴う胸の苦しさ 突然の息切れ 片側の手足の麻痺 ろれつが回らない 顔の片側が下がる 突然の激しい頭痛 急な視野の異常
このような症状がある場合は、健診結果の相談ではなく、緊急対応が必要です。
医療機関ではどのような検査をする?
血液検査
LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、non-HDLコレステロールなどを確認します。
また、糖尿病の有無を調べるための血糖値やHbA1c、肝機能、腎機能、甲状腺機能などを確認することもあります。
尿検査
尿蛋白などを確認し、腎臓の病気がないかを調べます。慢性腎臓病は動脈硬化のリスクと関係するため、脂質異常症の評価でも重要です。
血圧測定
高血圧があるかどうかは、LDLコレステロールの管理方針を考えるうえで非常に重要です。
健診では正常でも、家庭血圧が高い方もいるため、必要に応じて自宅での血圧測定をお願いすることがあります。
動脈硬化や心血管リスクの評価
年齢、性別、血圧、喫煙、糖尿病、腎機能、過去の心筋梗塞や脳梗塞の有無などを確認し、将来の動脈硬化性疾患のリスクを評価します。
必要に応じて、心電図、頸動脈エコー、ABI検査などを検討することもあります。
LDLコレステロールを下げる生活習慣
飽和脂肪酸を摂りすぎない
LDLコレステロールを下げるためには、食事中の脂質の質を見直すことが大切です。
肉の脂身、バター、生クリーム、チーズ、菓子類、揚げ物、加工食品などを摂りすぎている場合は、量や頻度を見直しましょう。
一方で、魚、大豆製品、野菜、海藻、きのこ類などを取り入れることは、食生活の改善につながります。
食物繊維を意識する
野菜、海藻、きのこ、豆類、未精製の穀類などに含まれる食物繊維は、脂質異常症の食事改善に役立ちます。
「主食を全て抜く」「極端な糖質制限をする」というより、食事全体のバランスを整えることが大切です。
体重を適正に近づける
体重が増えている方では、体重を少し減らすだけでも、脂質、血糖、血圧の改善につながることがあります。
急激な減量ではなく、継続できる範囲で食事と運動を整えることが重要です。
運動習慣をつける
ウォーキング、軽いジョギング、自転車、水泳などの有酸素運動は、脂質異常症の改善に役立ちます。
最初から激しい運動をする必要はありません。まずは、今より歩く時間を増やす、階段を使う、短時間の散歩を習慣にするなど、続けやすい方法から始めましょう。
禁煙する
喫煙は、LDLコレステロールとは別に、動脈硬化を進める大きな要因です。
LDLコレステロールが高い方が喫煙を続けると、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。脂質異常症を指摘されたことをきっかけに、禁煙を考えることも大切です。
薬による治療が必要になることもあります
生活習慣の改善はとても大切ですが、すべての方が生活改善だけで十分にLDLコレステロールを下げられるわけではありません。
次のような場合には、薬による治療を検討します。
- LDLコレステロールが高い状態が続く
- 糖尿病、高血圧、慢性腎臓病などがある
- 喫煙など他のリスクがある
- 心筋梗塞、狭心症、脳梗塞の既往がある
- 家族性高コレステロール血症が疑われる
LDLコレステロールが高い状態が続く 糖尿病、高血圧、慢性腎臓病などがある 喫煙など他のリスクがある 心筋梗塞、狭心症、脳梗塞の既往がある 家族性高コレステロール血症が疑われる
薬物療法では、スタチン系薬剤がよく使われます。必要に応じて、エゼチミブなどの薬を併用することもあります。心血管リスクが非常に高い場合や、通常の治療で十分に下がらない場合には、より専門的な治療が検討されることもあります。
薬を使う目的は、単に健診の数値を下げることではありません。将来の心筋梗塞や脳梗塞を予防することが大きな目的です。
薬は一度始めたら一生やめられない?
「コレステロールの薬は一度始めたら一生やめられないのでは」と心配される方もいます。
実際には、薬を続けるべきかどうかは、その方のリスクや経過によって異なります。
生活習慣の改善によって体重、血圧、血糖、脂質が改善し、リスクが下がれば、薬の量を調整できることもあります。一方で、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方、家族性高コレステロール血症が疑われる方などでは、長期的な治療が必要になることがあります。
大切なのは、自己判断で中止しないことです。薬をやめたい、減らしたい、副作用が心配という場合は、医師に相談しながら方針を決めましょう。
LDLコレステロール治療でよくある質問
Q. LDLコレステロールが高いだけで、体調は悪くありません。それでも受診が必要ですか?
はい。LDLコレステロール高値は、自覚症状がないまま動脈硬化を進めることがあります。
症状がない段階で見つけ、将来の心筋梗塞や脳梗塞を予防することが大切です。
Q. LDLコレステロールが140mg/dLを超えたら、すぐ薬が必要ですか?
必ずしもすぐに薬が必要とは限りません。
LDLコレステロールの値だけでなく、年齢、性別、血圧、糖尿病、喫煙、腎機能、家族歴、心筋梗塞や脳梗塞の既往などを総合的に判断します。
Q. LDLコレステロールが180mg/dL以上です。何に注意すればよいですか?
LDLコレステロールが180mg/dL以上の場合、生活習慣の影響だけでなく、家族性高コレステロール血症などの体質的な要因も考えます。
特に、若い頃から高い、家族に若くして心筋梗塞や狭心症を起こした人がいる、アキレス腱が太い、皮膚やまぶたに黄色っぽいしこりがある、という場合は早めに相談してください。
Q. 卵は食べてはいけませんか?
卵だけを極端に悪者にする必要はありません。
大切なのは、卵だけでなく、肉の脂身、バター、生クリーム、揚げ物、菓子類、加工食品などを含めた食事全体のバランスです。食事制限を厳しくしすぎて続かなくなるより、継続できる食習慣を作ることが大切です。
Q. サプリメントで下げられますか?
サプリメントだけでLDLコレステロールを十分に管理できるとは限りません。
特に、LDLコレステロールが高い方や、糖尿病・高血圧・慢性腎臓病・喫煙などのリスクがある方では、サプリメントに頼って受診や治療が遅れることは避けるべきです。
Q. 空腹で採血しないと正確にわかりませんか?
LDLコレステロールは空腹時でなくても評価されることがありますが、中性脂肪は食事の影響を受けやすい項目です。
健診結果の内容や再検査の目的によって、空腹時採血を行うことがあります。
まとめ
LDLコレステロールは、いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれる脂質です。高い状態が続くと、動脈硬化が進み、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などのリスクが高まります。
LDLコレステロールが高くても、多くの場合は自覚症状がありません。そのため、健診で指摘された時点で放置せず、自分のリスクを確認することが大切です。
特に、LDLコレステロールが140mg/dL以上の方、180mg/dL以上の方、高血圧・糖尿病・慢性腎臓病・喫煙などのリスクがある方、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方は、早めに医療機関で相談しましょう。
脂質異常症の治療は、数値を下げることだけが目的ではありません。将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぎ、健康な生活を長く続けるための予防医療です。