2026年10月01日

「夜になると咳が出る」「運動すると息苦しい」「呼吸をするとゼーゼー、ヒューヒューする」といった症状は、気管支喘息(ぜんそく)が原因かもしれません。
気管支喘息は、空気の通り道である気管支に慢性的な炎症が起こり、さまざまな刺激に対して気管支が敏感になる病気です。症状がない時期がある一方で、風邪、季節の変わり目、運動、アレルギーなどをきっかけに咳や息苦しさが繰り返し現れることがあります。
喘息というと「子どもの病気」というイメージを持つ方もいますが、大人になってから初めて発症することも珍しくありません。
また、喘息では必ずしもゼーゼーするとは限らず、咳だけが続くこともあります。長引く咳や繰り返す息苦しさがある場合には、「風邪が長引いているだけ」と考えず、原因を確認することが大切です。
気管支喘息とは
気管支喘息は、気管支に慢性的な炎症が起こることで、空気の通り道が狭くなりやすくなる病気です。
喘息の方の気管支は、症状が落ち着いているときでも刺激に敏感になっています。そのため、風邪や花粉、ほこり、冷たい空気などをきっかけに気管支が収縮すると、咳や息苦しさ、喘鳴(ぜんめい)などの症状が現れます。
喘息の大きな特徴は、症状の強さが一定ではないことです。
「昼間は何ともないのに夜になると咳が出る」「数週間症状がなかったのに風邪をひくと悪化する」といったように、時間帯や日によって症状が変化することがあります。
気管支喘息ではどのような症状が出る?
気管支喘息では、主に次のような症状がみられます。
- 咳が繰り返し出る
- 夜間や明け方に咳が悪化する
- 息苦しい、息が吸いにくい・吐きにくい
- 呼吸をすると「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする
- 胸が締め付けられるように感じる
- 運動すると咳や息苦しさが出る
- 風邪をひくたびに咳だけが長く残る
- 季節の変わり目に同じような症状を繰り返す
すべての症状がそろうわけではありません。
特に大人の喘息では、「ゼーゼーはしないけれど咳だけが続く」というケースもあります。
喘息の咳には特徴があります
喘息による咳では、症状が出る時間帯やきっかけに特徴がみられることがあります。
たとえば、昼間は比較的調子がよいにもかかわらず、夜間から明け方になると咳が増える場合があります。
また、
「風邪をひいたあとに毎回咳が1か月近く続く」
「春や秋になると咳が出る」
「走ったあとや階段を上ったあとに咳き込む」
「冷たい空気を吸うと咳が出る」
といった経過も喘息を疑う手がかりになります。
ただし、これらの症状だけで喘息と診断できるわけではありません。長引く咳には、咳喘息、感染後咳嗽、COPD、副鼻腔炎、胃食道逆流症など、さまざまな原因があります。
気管支喘息の原因は?
喘息は、一つの原因だけによって発症する病気ではありません。
アレルギー体質などの「喘息になりやすい背景」に、環境や感染症などのさまざまな要因が重なって発症すると考えられています。
症状を悪化させるきっかけとしては、ダニやハウスダスト、花粉などのアレルゲン、風邪などの呼吸器感染症、気温や気圧の変化、冷たい空気、運動、タバコの煙、強いにおい、ストレスなどがあります。
患者さんによって症状が悪化するきっかけは異なります。
「いつ症状が出るのか」を振り返ることは、喘息の診断やその後の管理にも役立ちます。
大人になってから喘息になることもあります
気管支喘息は小児だけの病気ではありません。
子どもの頃には喘息がなかった方でも、大人になってから初めて喘息を発症することがあります。
成人発症の喘息では、風邪をきっかけとして咳が治らなくなったことから見つかったり、「最近、夜になると咳が出る」「以前より運動すると息苦しくなった」といった症状から診断につながったりすることがあります。
そのため、これまで喘息と言われたことがないからといって、喘息を否定することはできません。
咳喘息と気管支喘息は同じ?
「咳喘息」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
咳喘息は、ゼーゼー・ヒューヒューといった典型的な喘鳴や明らかな呼吸困難が目立たず、慢性的な咳を主な症状とする病気です。
気管支喘息と共通する部分がありますが、まったく同じ病態というわけではありません。
咳だけが長く続いている場合でも、咳喘息だけとは限りません。日本呼吸器学会の咳嗽診療でも、遷延性・慢性の咳について複数の原因を考えながら診断を進めることが重要とされています。
「咳が長い=咳喘息」と自己判断せず、症状の経過や検査結果などを総合して判断することが大切です。
気管支喘息はどのように診断する?
喘息の診断では、まず症状の経過を詳しく確認します。
特に、
「いつから症状があるのか」
「夜間や明け方に悪化するか」
「症状がよくなったり悪くなったりするか」
「風邪、運動、季節などとの関係があるか」
「アレルギー疾患があるか」
といった情報が重要です。
喘息が疑われる場合には、必要に応じて呼吸機能検査、気管支拡張薬への反応をみる検査、呼気中一酸化窒素(FeNO)検査、血液検査、胸部X線検査などを組み合わせて診断します。
ただし、一度の検査で必ず診断できるとは限りません。
喘息は症状が変動する病気であるため、症状が落ち着いている時期には呼吸機能検査で明らかな異常がみられないこともあります。
GINA(Global Initiative for Asthma)でも、典型的な症状の変動と、変動する呼気流制限などの客観的所見を組み合わせて診断することが基本とされています。
気管支喘息と似た症状が出る病気
咳や息苦しさ、ゼーゼーする症状があるからといって、必ずしも喘息とは限りません。
鑑別が必要となる代表的な病気には、咳喘息、感染後咳嗽、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺炎、副鼻腔炎・後鼻漏、胃食道逆流症、心不全などがあります。
特に喫煙歴のある中高年の方では、COPDとの区別が重要です。また、喘息とCOPDの両方の特徴を持つこともあります。日本呼吸器学会のCOPDガイドラインでも、喘息を合併する場合を考慮した診療が取り上げられています。
症状だけで判断するのではなく、年齢、喫煙歴、症状の経過、診察所見、検査結果などを総合して判断します。
気管支喘息の治療
気管支喘息の治療で重要なのは、「苦しくなったときだけ症状を抑える」ことではありません。
喘息の背景には気管支の慢性的な炎症があるため、症状が落ち着いている時期も含めて、この炎症をコントロールすることが重要です。
日本アレルギー学会の「喘息予防・管理ガイドライン2024」や国際的なGINAの指針でも、吸入ステロイド薬(ICS)を含む治療が喘息管理の中心となっています。
吸入ステロイド薬
吸入ステロイド薬は、気管支の炎症を抑える薬です。
「ステロイド」と聞くと副作用を心配される方もいますが、喘息で使用する吸入薬は、薬を主に気管支へ届けることを目的としています。
適切に使用することで、喘息症状や発作を抑え、良好な状態を維持することにつながります。
吸入後には、口の中に薬剤が残ることによる副作用を減らすため、うがいを行うことも大切です。
気管支を広げる薬
狭くなった気管支を広げ、咳や息苦しさを改善する目的で気管支拡張薬を使用します。
喘息の状態に応じて、吸入ステロイド薬と長時間作用性気管支拡張薬(LABA)が一つになった配合吸入薬などを使用することがあります。
治療内容は、症状の頻度や発作歴、呼吸機能などに応じて調整します。
症状が改善しても自己判断で治療を中止しない
喘息治療で注意したいのが、「咳が止まったから治った」と考えて自己判断で吸入薬を中止してしまうことです。
喘息は、症状がなくても気道の炎症が十分に落ち着いていない場合があります。
症状だけではなく、発作の有無、日常生活への影響、呼吸機能などを確認しながら治療を調整していくことが重要です。
治療を減らせる状態になった場合にも、原則として医師と相談しながら段階的に調整します。
吸入薬は「正しく吸えているか」も重要です
喘息治療では、どの薬を使用するかだけでなく、吸入薬を正しい方法で使用できているかも非常に重要です。
吸入器には複数の種類があり、それぞれ使い方が異なります。
治療を続けているにもかかわらず症状が改善しない場合、「薬が弱い」のではなく、吸入方法が適切でないために薬が十分気管支へ届いていないこともあります。
喘息のコントロールが悪い場合には、薬を追加する前に、吸入方法や治療をきちんと継続できているかを確認することも大切です。GINAでも、治療強化を検討する際には吸入手技や治療継続状況などを評価することが重視されています。
日常生活で気をつけること
喘息を良好にコントロールするためには、薬物療法とともに、自分にとって症状を悪化させる要因をできる範囲で避けることも重要です。
アレルギーの原因が明らかな場合には環境を整え、喫煙している方では禁煙を検討します。
一方で、喘息があるからといって運動をすべて避ける必要はありません。
適切な治療によって喘息が良好にコントロールできれば、多くの場合、通常の日常生活や運動を行うことができます。
「喘息だからできないことを増やす」のではなく、症状をできるだけ抑えて通常の生活を送れる状態を目指すことが治療の目的です。
このような症状がある方は一度ご相談ください
次のような症状がある場合には、気管支喘息を含めた呼吸器疾患について一度評価を受けることをおすすめします。
「咳がなかなか治らない」
「夜や明け方になると咳が出る」
「風邪をひくたびに咳だけが長引く」
「季節の変わり目になると咳や息苦しさが出る」
「運動すると息苦しい」
「呼吸をするとゼーゼー、ヒューヒューする」
「以前、喘息と言われたことがあるが現在治療していない」
「吸入薬を使っているが症状が十分改善しない」
これらの症状は喘息以外の病気でもみられるため、症状が繰り返す場合には原因を確認することが大切です。
強い息苦しさがある場合は早めの受診が必要です
喘息では、急激に症状が悪化する「喘息発作」が起こることがあります。
息苦しくて横になれない、会話するのも苦しい、歩くことが難しい、処方されている発作時の吸入薬を使用しても改善しない、といった場合には重い発作の可能性があります。
特に呼吸困難が強い場合には、通常の外来受診を待たず、救急医療機関への受診や救急要請が必要になることがあります。
「喘息だからいつもの症状だろう」と無理に我慢しないことが大切です。
気管支喘息についてよくある質問
Q. 大人でも突然喘息になりますか?
はい。気管支喘息は子どもだけの病気ではなく、大人になってから初めて発症することがあります。風邪をきっかけに咳が長引き、その後の診察で喘息が疑われるケースもあります。
Q. ゼーゼーしなくても喘息の可能性はありますか?
あります。喘息では必ずしも喘鳴がみられるわけではありません。咳だけが目立つ場合もあるため、症状の経過や検査を含めて判断します。
Q. 夜だけ咳が出るのは喘息ですか?
夜間から明け方に咳が悪化することは喘息にみられる特徴の一つです。ただし、夜間の咳には喘息以外の原因もあるため、症状が続く場合には診察を受けることをおすすめします。
Q. 喘息は治りますか?
喘息は気道の慢性的な炎症を背景とする病気であり、症状がなくなったからといって必ずしも病気そのものがなくなったとは限りません。一方、適切な治療によって症状や発作を抑え、通常の日常生活を送れる状態を維持することは十分可能です。
Q. 吸入薬はずっと続けなければいけませんか?
必要な治療期間や薬の量は患者さんによって異なります。一定期間良好な状態が続けば治療を減らせる場合もありますが、自己判断で中止せず、症状や経過を確認しながら医師と相談して調整することが大切です。
Q. 風邪のあとに咳だけ1か月近く続きます。喘息でしょうか?
喘息や咳喘息の可能性がありますが、風邪のあとに咳だけが続く感染後咳嗽など、ほかの原因もあります。特に同じような症状を何度も繰り返す場合や、夜間・明け方に咳が強い場合には一度ご相談ください。
まとめ|繰り返す咳・息苦しさは気管支喘息の可能性があります
気管支喘息は、気管支の慢性的な炎症によって、咳、息苦しさ、喘鳴などを繰り返す病気です。
「風邪をひくたびに咳が長引く」
「夜になると咳が出る」
「運動すると息苦しい」
「ゼーゼー、ヒューヒューする」
といった症状が繰り返されている場合には、喘息が隠れている可能性があります。
喘息治療では、症状が出たときだけ対処するのではなく、吸入ステロイド薬などによって気管支の炎症を適切にコントロールすることが重要です。
長引く咳や繰り返す息苦しさでお困りの方は、「風邪が治っていないだけ」と長期間様子をみるのではなく、一度医療機関へご相談ください。
知立ファミリークリニックでは、咳、息苦しさ、ゼーゼーするといった症状についてご相談いただけます。知立市はもちろん、刈谷市・安城市など周辺地域で長引く咳や喘息症状にお困りの方も、お気軽にご相談ください。